室内で開放感を感じる空間はどんな要素があるでしょう。大きな開口や、白く高い天井、トップライトや一階から二階までを繋げる吹き抜けなど、建てる人によって同じ開放感でも、様々な方法がありますよね。もちろん限られた敷地の条件の中で要望を織り交ぜながら、工夫や新たなアイディアによって新たな開放感を得ることもあります。今回ご紹介したいのは、車いすでも生活の出来る天井の高い開放感溢れる住宅です。齋藤和哉建築設計事務所によって計画された本住宅は、その高い天井を生み出すために大きな吹き抜けを用いた、開放的で明るい住まいでした。各室ごとに用いられた様々な素材が全体のバランスと調和しながら、心地よい住空間となりました。
宮城県仙台市内に建つ本住宅。シンプルな長方形のフォルムに、ほぼ水平に分割したように木目と塗り壁の外壁の二層の素材がインパクトとなった外観です。鋭く分断するように薄い鋼製の庇が二層の間に差し込んでいます。全体的にナチュラルで柔らかい雰囲気ですがその鋭い庇によって少しシャープな印象に。
高い天井が気持ちよく広がる一階の居間スペース。まるでロフトのように繋がる二階スペースとは、ほぼ同じ空間を共有するような距離間で家族の存在を身近に感じることができます。開放感あふれる空間の中にも、木目の天井や薪ストーブなど温かみを感じる素材や機能が。大きな開口によって日中の温かい日差しは自然の採光と通風によって心地よい空間になります。
木板の壁面収納が大きなインパクトをもつシンプルな内装です。天井の構造現わしの間隔に揃って伸びる棚幅はスッキリとした印象。天井まで伸びるその収納力は空間を無駄にすることは無さそうです。
一階の大きな開口以外は豆窓が機能的に設けられています。それでも昼間には十分な採光が空間に行き渡るほど、吹き抜けと高天井によって快適な住空間となります。一階床の冷たさを感じる素材と二階床の温かさを感じる素材は互いの機能を活かしながら違和感なく調和しているようです。大きな開口によって二階からも眺める事の出来る庭は異なる空間の繋がりを感じることができます。
それぞれの室に用いられた異なる素材は、その肌触りや質感、視覚にも楽しむことができます。少し珍しいキッチン天板に使われたコンクリート素材の仕上げは、クールな印象。スタイリッシュさを醸し出しながらも足元の木質や天井の明るい木目など、一見バラバラの素材は上手にまとまりを作っているようです。異なる素材を用いながらも、単調でシンプルな仕上げからは無駄を削いだ、洗練された住空間ではないでしょうか。